日本という国は、災害時の救助能力は世界一流。これはほとんどの人が認める所。でも、避難所のレベルは先進国では最低レベル。ソマリアの難民キャンプにも劣る環境だそうです。
寒い体育館などで沢山の人が雑魚寝しているのが当たり前の日本の避難所を山猫もずっと疑問に思っていました。
確かに、緊急時なのですから、少々の不便は当たり前。平時と同じような暮らしをする事は出来ないのはわかっています。
でも、ちょっとした工夫や、事前の準備があればもう少し良い環境が作れるのではないか?
日本人には我慢が美徳という考え方があって、それは素晴らしい面もあるのですが、災害時の避難は一日、二日で終わるものではなく、終わりの見えないくらい長い期間続くものです。
震災から復興して新しい生活を作っていかなくてはいけない状況なのですから、避難生活は少しでも希望を持てるものであってほしいなあと考えてきました。
でも現状の避難所はどうでしょうか? せっかく地震から生還したのに、過酷な避難環境がもとで亡くなる人が後を絶ちません。
本書の著者は、世界的な登山家、「野口 健」さんです。山猫は、野口さんを有名な登山家としか認知していなかったのですが、実は、災害救助に尽力されている方だったのです。
この本「震災が起きた後で死なないために 「避難所にテント村」という選択肢 (PHP新書)
」は、野口さんが関わった二つの災害支援の経験を元に書かれている本。一つ目は、ヒマラヤ登山中に発生した、ネパールの大地震。もう一つは、熊本の大地震です。
熊本の地震の時、野口さんが、熊本の避難所にテント村を作ったという記事を目にしていましたが、その時は、「すごい人がいるなあ」ぐらいの感覚。テント村が、普通の避難所に比べて、何がどう違うのかまでは考えがめぐりませんでした。
本書は「避難所は窮乏生活を耐え忍ぶ場所ではなく、次なる生活再建のための拠点になる場所だ。
そのためには何が必要か」という課題について、テント村を作るという行為の中での、野口さんの取り組みや、行政のありかた、避難生活への心構えをいろいろな側面から掘り下げています。
いままでの防災本は、どちらかと言うと、災害発生時に無事避難するにはどうするか?とか、防災グッズは何を準備しなくてはいけないか?という観点で書かれている物が多く、長い避難生活を充実させるには具体的にどうようにすればよいかという本は少なかったと思います。
この本は、題名の通り、「震災が起きた後に死なないために」に重きを置かれて書かれています。
確かに我慢する事は大事。でも、災害時というのは、地震が起こっただけで多くのものを失っている状態なのです。すでに十分耐えている状態で避難所に集まってくるわけです。
精神論で、「なせば成る」と言うのは簡単ですが、人間が健康的に生きていく最低限の環境が準備できなければ、耐えられなくなってしまう人が必ずいますし、生活を楽しめなければ未来を考える事も難しい。
野口さんは、ヒマラヤなどの登山を通じて、人が健康的に生きていける最低限の環境について熟知しているのだなあと感じます。
登山に持っていけるものには限りがあります。でも、体調を崩してしまったら、登山どころではなく命が危ない。では、何を準備すればいいのか?という事をずっと考えてこられたのかなと思います。
野口さんが重要視しているのがプライバシーの問題。人は、人と人との関わり合いもひつようですが、一人になれる時間も必要な生き物なのです。
山猫は、プライバシーを確保するために、快適に車中泊をする方法を提案してきましたが、やはりテントにはかないませんよね!
徹底的に被災者の実態に寄り添った本書は一読の価値あり。山猫のおすすめです!
震災が起きた後で死なないために 「避難所にテント村」という選択肢 (PHP新書)
(kindle版もあります!)
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