このブログでは、何回か【飲料水】についての記事をアップしてきました。災害時に限らず飲料水には下痢の元になる細菌がいない方がいい。
ひどい下痢になってしまうと、体力も落ちてしまいます。ただでさえ苦しい避難生活がさらに辛く苦しいものになってしまう。特に抵抗力の弱い、乳児、幼児、老人はなるべく安全な水を与えたいですよね!
今までにこのブログで紹介した、携帯型浄水器の主な役割は、水の中に含まれる細菌を除去するというもの。製品によっては有害な細菌類をほとんど吸着してしまうという物もありました。
しかし、完全に細菌を除去できるわけではないし、容器にも細菌が付いているかもしれません。保管容器内の水はすぐに使い切れば安全かもしれませんが、時間がたつと雑菌が繁殖してしまうかも!とだんだん不安になってきてしまいました。(ちょっと心配性ですね。。)
ただ、災害時という事を考えると、消毒法は限られてきてしまいます。事前に消毒薬(塩素)を準備しておけば、薬品による消毒も可能なのですが、薬品による消毒は、効果がいまいちはっきりとわからないという問題があります。(薬品は保管しておくと徐々に劣化してしまうため、適量を入れたと思っても期待通りの効果が得られない事もあります。)
ここは、昔からの消毒の定番、【煮沸消毒】を中心に考えていきたいと思います。
そもそも、おなかを壊す原因になる細菌って・・・
昔から、生水を飲むとおなかを壊すと言われていますよね。生水の中には下痢の原因となる細菌が入っているのですが、一口に細菌といってもその種類はかなりの数があるのです。
まずは、下痢の原因となる細菌の種類を調べてみました。
お腹を壊す原因となる主要な細菌
- 腸管出血性大腸菌:O157に代表される大腸菌類です。細菌性の下痢と聞くとまず登場するのがこの腸管出血性大腸菌です。ベロ毒素と呼ばれる毒を出します。
- その他の病原大腸菌:実は大腸菌は種類がかなりあって、その毒性も様々。
- サルモネラ菌:サルモネラ属の菌の中には、腸チフスを引き起こすチフス菌も含まれるようですが、ここでは感染型食中毒を起こすタイプの物を指します。かなり強力な菌で抵抗力のない人の場合は重症化することもあります。
- カンピロバクター:あまり馴染みのない名前ですが、平成27年度の統計では、ノロウイルスに次ぐ患者数。平成10年以降は日本国内の人の死亡例はないとされています。
- 腸炎ビブリオ:基本的には淡水には含まれていない細菌。主に汚染された魚介類を食べる事で発生。魚介類を生で食べる事の多い日本では、腸炎ビブリオの感染は珍しくはない。
- 赤痢菌:赤痢の原因となる細菌。汚染された水や食物を食べる事で感染する
- コレラ菌:河川や海などの水中に存在する菌。名前からわかる通りコレラの原因となる。
- セレウス菌:土壌や水に多く存在し、健康な成人の腸管の中にもいる事がある。セレウス菌の食中毒は毒素系食中毒なので、一度なっても免疫が付かず、何回でも感染発症する。煮沸でもアルコールでもなかなか除菌できないという面も。。
- ウェルシュ菌:河川、海、土壌中に広く分布している。人の腸内にも存在。悪玉の常在菌である。
- エルシニア・エンテロコリチカ:冬季の食中毒の代表的な存在。低温でも増殖するのがポイント
- 黄色ブドウ球菌:危険な感染症を起こす菌ではあるが、腸内細菌の一つでもある。感染力は強いが、菌が少なければ毒性は高くない。
代表的な細菌をあげてみましたが、面白いのは、食中毒(下痢など)を起こす細菌であっても、人間の腸にいつも存在しているものが多い事。なんでいつもいるもので食中毒が起こるのか?山猫は医者ではないのでわからないのですが、腸内という沢山の菌が共存している環境では、ある種の細菌が爆発的に増える事はないためなのかな?と想像しています。
煮沸消毒でどの程度菌を減らす事が出来るのか?
一言で煮沸消毒と言っても、温度や、煮沸時間など色々な要素があります。ここでは病気の原因となる菌毎に、どの程度煮沸すれば効果があるかを調べてみました。
腸管出血性大腸菌(O157)
有名な大腸菌O-157 ですが、熱に弱いという性質があります。75℃以上で1分間加熱すると、不活性化するそうです。水が沸騰すればOKという事ですね!(65℃30分でも可)
サルモネラ菌
サルモネラ菌も熱にはあまり強くない細菌。O-157と同じく、75℃以上 1分間の加熱で不活性化します。
カンピロバクター
カンピロバクターも熱には強くない細菌。60℃以上 1分間の加熱でほぼ不活性化されます。
腸炎ビブリオ
正確な温度と時間は分からなかったのですが、腸炎ビブリオも熱には弱い細菌。加熱する事で簡単に不活性化されるようです。
セレウス菌
セレウス菌は、熱に強いタイプの細菌。なんと100℃で1時間加熱しても不活性化できません。熱に強い細菌は、芽胞(がほう、spore)と呼ばれる防護壁のような構造を持っています。
この芽胞構造を持っている菌は、煮沸ではなかなか不活性化できないのですね。。。ちなみに、セレウス菌は薬品による消毒にもめっぽう強くて、次亜塩素酸系(つまり塩素)以外の消毒液ではなかなか除菌できません。つまり、除菌用としてよく使う消毒アルコールでは、効果がないという事になります。
ウェルシュ菌
食中毒を起こすウェルシュ菌も、芽胞(がほう、spore)構造を持つ細菌。つまり熱に強いという事です。100℃4時間でも死滅しないものもあるとの事。この菌には煮沸消毒は意味がなさそうです。
エルシニア・エンテロコリチカ
正確な時間は分からなかったのですが、エルシニア・エンテロコリチカは熱には強くはありません。煮沸させる事で、不活性化する事が出来る細菌です。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌自体は、熱に弱く75℃以上 1分間で不活性化できるのですが、食中毒の原因となる毒素は、100℃30分の過熱でも分解できないとの事。一旦、増えてしまうと対策が難しいという事ですかね。。
番外編 ノロウイルス
今回は、細菌の話でノロウイルスは対象外なのですが、同じく、下痢を起こすウイルスとして有名なノロウイルスも取り上げたいと思います。ノロウイルスは水に含まれているというより、感染者が使った食器などに付着している場合がおおいのですが。。
ノロウイルス自体は、86℃以上 1分間で不活性化するそうです。煮沸するのが難しい場合は、沸騰したお湯を掛けたり、スチームアイロンで加熱したりしても効果があるそうです。
まとめ
細菌性の下痢を引き起こす細菌はいくつかあるのですが、熱に弱い細菌が多い事が分かりました。中には、どんなに沸騰させても死なない菌もありましたが、とりあえず沸騰させればほとんどの病原菌をやっつける事が可能!という事がわかりました。
心配だったら、とにかく煮沸してから飲むという事を徹底したいですね!
災害時に煮沸消毒することなんてできるの?
地震などの災害時には、ガスが使えない可能性が高い。ガス漏れも心配ですしね。。
本ブログでは、災害時にお湯を沸かす道具についていくつも特集しています。もしよろしければ以下の関連記事もご覧ください。
https://luchs.fxproject-blog.com/stove/
~その他の記事はこちら~
煮沸消毒の方法を詳しく解説した記事はこちら!
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